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〜選択した記事〜

Vol.001

さあ、今日はラングドック! 2010年07月18日

 パリのメトロ群はストで本数が少ないという日。ああ、またか……と戦闘態勢モードで出かけるワイン講座です。私の大事な生徒さんに会いに行くため、老若男女入り乱れてぎゅうぎゅうになっている車内で私もスペースを確保。これも鼻を鍛える修行なのだ、と幾層にもなってこもるヒトの体臭をかぎ分けるのです。皆さんよかったね、私がまだワイン臭くなるまえで……。

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 講座は午後、夜の二本立て。それぞれムードが違うところがいいのです。しかし共通しているのは、パリというただ美しいだけではない街で、体を張って日々を過ごす皆さんがワインを通して更に人生を華やかにしていらっしゃる、ということです。私はそのお手伝い。トウキョウのこじゃれたワインバーで、高級ワインを空酒で飲む――という世界とは正反対の環境を目指しています。よし、今日はLanguedocラングドック地方の白、ロゼ、赤でキメましょう。

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 南仏、というよりはそこから地中海を西にたどるとラングドック地方です。Monpellierモンペリエという都市の周りに、ぶどう畑は広がっています。厚みの中に、ほんわりした甘ささえ感じられるような意外にフェミナンなラングドック。その中でも群を抜いて美人な、Château de l’Engarranシャトー・ド・ランギャランは日本でもファンの方が多いことでしょう。ホントにこのワインたち、女の人です。果物カゴをさげた少女、革ジャンをきて颯爽と歩く若マダム、毛皮をまとったベテラン女優、といろいろ揃っていますよ。これは銀座のクラブよりすごい。しかも地下鉄のカルネ(十枚つづり切符)より安いのですよ。

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 オンナを喜ばすにはゴハンです。ランギャランの彼女たちがニッコリ微笑んでくれるお料理って――心配無用、気さくなあの子達は普段のゴハンが大好きなのです。とはいえ、訳もなくパスタやピザ、あやしげなスシが大好きなパリジェンヌとも違います。
 澄み切った朝焼けのようなロゼ。繊細な色とは裏腹に、しっかり果実味がはね返るのです。じゃあ、ちょっと辛めでもOKでしょう。例えばチョリソーとパプリカのクリームソースなんか。今回はオリーブが入ったクラッカーの上にかけて、グロゼイユの実を添えました。このかわいらしいすっぱさが、チョイ辛の味をきれいにフィニッシュへと導いてくれるでしょう。そして更にそこにロゼの香り高い酸味が流れ……。

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 ハーブや森の土、Mûre ミュール(木いちご)やサクランボの香りたっぷりな赤には、まずはきのこや栗が入ったソースが思い浮かびます。ここは愛情のこもったハンバーグなどにたっぷりソースを加え、ちょっと煮込み風にしてみましょうか。

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 さて、ランギャランの大奥が登場。これはまた何と贅沢な味わいでしょうか。赤い果実味の凝縮感は「アンタ、いいかい。お酒はね、せっかちに飲んじゃいけないよ……」とシガリオ(細葉巻)片手に若造をたしなめるおねえさまのよう。彼女の涙はグラスの中を色気たっぷりにどろんと、流れて行きます。ワインの甘み、酸味、苦味、全てがゴージャスなら、お料理は逆にシンプルなものがいいですね。そうはいってもチーズをさくっと切る、というのではなく、少し手間をかけてもなお、見た目は単純、というもの。経験豊かな女性はうわべだけのオトコには見向きもしません。

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 ローストビーフを作ってみました。じっくり焼いてから花椒[カショウ]をきかせたタレに漬け込むこと5日。お肉はもう味を吸い込んで舌の上で旨みと一緒にほろほろに崩れる感じ。ランギャランのワインに感じる甘さはスイートコーンに似ているな、と思いました。そこで付け合せは北海道風バターコーン。

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 皆さん、パリの生活はつらいこともあるけれど、一緒においしいワイン飲んで生きましょうね。エスパスジャポン、月イチのワイン講座に通ってくださる皆さまへの感謝を込めて。そして連絡業務など奔走してくださるエスパスジャポンのCさんにもメルシー! 

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