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〜選択した記事〜

Vol.004

嗚呼! パリモーターショー2010 2010年10月14日

秋深し。夏のヴァカンスと冬のヴァカンスの間、超勤勉家のフランス人は「仕方がない、ちょっとだけ働いておこうかな」と思います。その上をゆくフランス公務員たちは「さあ、ここでストライキでもして、また海辺に戻ろうか」と旅行会社のサイトを開く時期。前回ご紹介したアルザスの家では、収穫は一年中です。「今週はくるみを30キロ、りんごを80キロ採ってクタクタだ」との報告がありました。くるみは製油して香ばしいくるみ油に、りんごはりんごジュースにしたり、ジャムにして保存です。大変だろうけれど、なんてのどかな世界なのでしょう。

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それにひきかえパリでは、正反対の恐ろしいイベント「パリモーターショー2010」の幕が切って落とされました。地球に生きる人間が織り成す消費世界。その最高峰の祭典がこの「クルマ展示会」なのでしょう。花の都ではカネがごっそり動いています。

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この最中、私を含めパリでケータリング会社や、食品、警備、運搬、清掃などに関わっている人たちは、死ぬほど忙しい思いをします。なにしろ一般公開に先立つプレス向け公開の2日間は、各自動車会社の財力(あってもなくても)の見せ所。趣向をこらした派手なパーティーで招待客をもてなし、「アテらのクルマ、宣伝してーな。頼りにしてまっせ」と鼻息が荒い。しかしこの不景気! その裏側では働く者の話は、涙なくして語れません。

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初日。会場入り。その日の午前1時に終わった仕事のせいで、もはやどろどろに疲れている若くない私は、C社のスタンドへ。入ってすぐのところにミシュランのビバンダム君が仁王像のごとく立ちはだかるが、その無垢な笑顔に一気にやる気をなくしてしまう……もう!

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本日一本目のお仕事は、会場サロンでのドリンクバー、および昼食カクテルのサービス。初日だからC社の方々は気合が入っている。まあ、何杯ものカフェをお召し上がりになること。顧客は世界各地からいらっしゃるのに、冷たいお飲み物といえばコカ・コーラがやけにでるのは、C社がアメリカ企業のためでしょう。そういえば、ワインもカルフォルニアだったっけ。

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夜、二本目。ホールを変えV社へ。いよいよ本番、夜のカクテルパーティーです。まずいことにこの仕事をとりしきる営業マンは「Monsieur Difficile ムッシュー難事」で知られ、ウルトラモダンでソリッドなパーティーを企画する人。

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ああ、テーマカラーは赤ですか。それってこの車会社が、中国に買われたからですね。そして、赤のマカロンを、何? はあ、このガチャガチャカプセルみたいなのに一つずつ入れるのですか? これはデコレーションの一部になるのですね。はい、しかし、どうしてもマカロンを食べたい人は……コレ結構開けるの大変ですよ!

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そうこうしているうち、シャンパンがどんどん冷やされてゆく。うわ! Ruinart! ココ、お金かけてる。バックヤードには高級シャンパーニュの空箱が、バベルの塔のごとく積み上げられる。こんな大掛かりなバンケットでは、シャンパン達は飲みごろ温度も無視され、とにかく氷で、一緒くたにキンキンに冷やされるのが常。飲む側にも変に贅沢なのがいて、立ち話の間にちょっとぬるくなったシャンパンが入ったフルートを持ってきて、「フレッシュなのと取り替えて」ときます。まあ、超猫舌なムッシューですこと。しかしこんな方々がフランスの経済を支えているのでしょうね。

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そのうちに、バーンと音楽が鳴り、カクテルパーティーの開始。昭和のラブホテルを思わせる丸ベット状の台の上で回転するピカピカの新車をバックに、エライ人がスピーチを始める……

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さて二日目の夜は金曜日のこともあり、もっと大掛かりです。今回は日本の会社からお呼びがかからなかったなあ、と前日とおなじC社でホットドッグのデモンストレーション(もう、いかにも米国!)を準備していたら、緊急コール、「ユキエ、S社に移動すべし!」。コックコートのまま、包丁かついで別のホールへ。やっとニホンの車に会える……

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前回(2年前)のショーではお好み焼きをサービスしたS社は、今回は和から外れ「アジア風生春巻き」のデモンストレーションを実施。予算の関係、大人の事情というやつでしょうか。配置されたフランス人キュイジニエたちのなかに、それをつくれる者がいなかったと言うわけです――まあ、当たり前か……でもさ、コレって料理人の基本でしょう……まあ、フランス人だからねえ……チッ、などとぼやきながら準備開始。しかし心の中はまんざらでもない、だって馴染みのある料理ですもの。ホットドックより百倍もマシ。スタンドを大急ぎで立ち上げ、パーティーが始まる。その前に、上のVIPサロンに寄って、冷えた吟醸酒をキメられるのは日本企業ならではのメリット。よし、大和魂が入った! 

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こういう会場でのお料理のデモンストレーションというのは、酒片手に集まる人たちの前で愛想を振りまきながら、いかに手際よくおいしそうに作るか、というのが大事です。ささっと生春巻きを仕上げ「Voilà, c’est a vous! Bonne degustation! どうぞ、あなたたちのものですよ!味わってください!」

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デザートは小ボール型アイスにとろとろのショコラをかけ、トッピングで召しあがっていただくというもの。わたしたちの向うではミニワッフルをやっている。パーティーが盛り上がり、皆がなごむ時間です。

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S社のシャンパンはさすがにRuinartではないけれど、フルートグラス片手に豪華な新車に乗ってみたり、ハイヒールの美人揃いのショーガールを口説いてみたり、やはり雰囲気は超デラックス、招待客の特権なのですね。経済はこうして発展するのか。

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次の日はいよいよ一般公開。バーゲン会場のごとき人ごみの中、あちこちに座りこんでサンドイッチをかじる人々……彼らは前日までの出来事を、知らない方がよいかもしれません。

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