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2005年06月08日

徒然考

〜JAZZと本曲〜

小さい頃(たぶん小学校の後半)からjazzが好きだった。

FM放送はまだ実験放送だったから、ラジオをFEN(the Far East Network)にあわせて、曲名も演奏者もわかららないまま、わけのわからない英語とともにスピーカーから流れてくるピアノやトランペットの音に、大人への憧れを感じたものだった。

その内にFM放送が本格化して、jazzの曲が日本語の解説つきで聞けるようになった(その番組、たしか日曜の午前中にやっていたような気がするのだが、よく覚えていない)。そこでセロニアス・モンクというピアニストを知ったが、それはそれは新鮮な驚きだった。今思えば、それがはじめて覚えたjazzプレーヤーの名前だったかも知れない。

当時はビートルズの名がヒットチャートにのるようになった頃で、盛んに聞いたが、夜の寝床で聞くのは、しばらくのあいだは、やっぱりFENだったような気がする。確か夜10時半から30分ほどjazzをやっていて(これも曖昧な記憶)、それが終わるとダイヤルを変えて「マリコ・アラカルト」(「今晩は、今晩は、もうひとつおまけに、今晩は」ではじまる番組。ニッポン放送だったかな、文化放送だったかな?)を聞くのが楽しみだった。

中学校に入ってブラスバンドで、一応トランペットをやった。けれど、むしろサッカーの方に夢中で、音楽に身が入らず、運動会ではいつも「人がいないのでおまえはシンバルをやれ」といわれていた。マイルス・デイビスのようにトランペットが吹けたら・・・と思って少しだけ練習した時期もあったけれど、結局その後の人生、音楽に関してはもっぱら聞く側で、楽器を演奏できる人を見ると常にうらやましいと思うようになった。

そんなわけで、自分がいい年をして再び楽器に手にするとは思わなかったが、40歳近くになって、ひょんなことから尺八に出会った。やっと自分も楽器を演奏できる!小さい頃からの夢がかなったようでうれしかった。しかしjazzが好きな人間としては困ったことになった。尺八という楽器、最初のうちは音が出ないし音程も悪い。とても音楽というところまでは行かないのだが、音のでるものをもってしまうと、ついjazzが演奏できたらいいなあ・・・と思ってしまうのだ。

ところが、これほどjazzに向いていない楽器もない。それに尺八をやる以上は、もちろん尺八にあった曲を練習するのが本道だし、またそれが一番いい。一方、jazzのリズムとかフレーズを尺八で練習しようとしてもなかなかうまく行かない。才能の問題はもちろんあると思うが、楽器のもっている特性というか、こまかなリズムにのせて粒の揃った音を出すことは、この楽器ではどうにも難しい。尺八を手にしてまもない頃から、そんな板挟みで苦労する羽目になった。

ともあれ、その後下手の横好きで尺八の練習は何とか続いているけれど、音が出てくるようになると、ますますjazzを吹きたいという思いが募ってきてて、板挟み状態のまま、自分なりに空しい努力を続けている。

こうして、素人は素人なりにいろいろと悩んでいたあるとき、古典本曲の練習をしていて思ったことがある。

私は譜面がないとほとんどなにも演奏ができないという典型的な「譜面人間」(譜面以前に身体の中に音楽がある人が本当にうらやましい)で、古典本曲の練習も必死に譜面を眺めながら、ここはどう吹くんだろう・・・と苦戦に苦戦を重ねているのだが、あるとき、譜面に書いてある内容というか、フレーズというのか、そういうものがふと「聞こえて」きたことがあった。

「これだ」と思った。jazzだといわれてる曲はいっぱいあるけど、別にjazzに分類される曲というのが決まっているわけでもない。ある意味では、どんな曲でもjazzになってしまうのだ。逆に、たとえどんな曲でも、もしフレーズがjazzになっていないと、それは決してjazzには聞こえない。古典本曲とすごく似ていると思ったのだ。

細かいことは自分には良くわからないが、jazzフレーズという特定の雰囲気を持ったひとまとまりのリズムとメロディをつかって自分を表現するというアプローチが古典本曲に通じている。それには、譜面通りでも譜面通りでなくても、要するに、自分の中にフレーズが聞こえてこないことにはどうにもならない。

いわゆる「アドリブ」というのは、そういうフレーズの積み重ねで作る自己表現なんだと思う。古典本曲もその点ではアドリブの世界だ。そう考えれば、尺八という楽器がjazzに向いていないとしても、どこかに「尺八にあったjazzフレーズ」というのがあるような気がする。

古典本曲とjazz。全然違うように聞こえるけれど、それは自由自在の音楽だからこそ、また演奏する人にとっては「自分を発見する」音楽なのだと思った。(K)

⇒サマータイム(抜粋)

⇒瀧落(抜粋)

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