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〜選択した記事〜

Vol.002

コリアンの夏、ワインの夏 2010年08月09日

 街を歩いていて「ニーハオ」と声をかけられることは多々あっても、決して「アニョハセヨ」と言われることはまずないパリの日本人。今となっては中国人に間違われようが、何人に間違われようが大して腹を立てなくなった私ですが、はたと思うのです。韓国はまだまだこの国にとっては知る人ぞ知る、というスタンスの国なのかと。


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 例えば、パリの韓国料理レストラン。確かに味は本場のものかもしれませんが、明らかに何かが足りないのです。こんなフラストレーションは、ここに限らず、中華レストラン、はたまた我が国の料理店でも、酒飲みならば一度は抱いたことがあるに違いないと断言できます。つまりアジア系の普通クラスのレストランで、「ニーハオ」や「アニョハセヨ」、まれに「コニチハ」と言われようと、「そんなことはどうでもいいから、おいしい酒を飲ませてくれ!」と返答したくなるほど、酒のリスト、ワインリストが貧弱なのです。中華だから黙ってチンタオ、和食だからサケ、コリアンだからマッコリを飲めばいいじゃないか、という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ここはワインの農業国、フランスなのです。どうして食事に合うワインを飲んじゃいけないのでしょう?


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 パリの韓国料理ストランのワインリストには、不思議なほどブルゴーニュのワインが多く、そこはすでにトワイライトゾーン(不可解な地域)。辛味やニンニクの効いたお料理に、ブルゴーニュの繊細な味わいを合わせるというのは、ギャンブル狂いのダメ男に "だめんず" の女をあてがうようなもので、決して、決して、実りがあるとは言えない悪循環を引き起こすこと必定です。なぜ、料理を引き立てるようなワインの選択肢がないのか。まず言えるのは、そもそも韓国風の味付けがワインを選ぶからでしょう。確かに難しい。しかしだからといってマッコリに逃げるのは、もったいない。外には、ありとあらゆるワインが溢れかえっているのですから……


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 前置きが長くなりましたが、ここにぶちまけたイライラを解消してくれたのが、大阪生まれ、本業はアーティストのヨンヒさん(以下ヨンちゃん)。彼女は私と同じでかなりの飲酒家で頼もしく、連れだってフランスにおける個人ワイン消費量を上げるべく"勉強会"の日々を送っています。彼女の作る韓国の伝統的な家庭の味は、自然でありながら、だしやたれの仕込み、調理法に手間をかけているので、かなり深みのあるものなのです。キムチの味も違いは明らか。彼女は韓国料理人としても活躍しているのですが、プライベートでもよく作ってくれます。そこで私は「これ、友達が作ったゴハンだから」とリラックスしてワインを選びます。そんな些細なことが、料理とワインのいい組み合わせを呼ぶきっかけとなるのです。韓国料理の滋味、辛味、旨みに答えてくれる普段のぶどう酒はちゃんと私たちを待っていてくれるのでした。

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 夜な夜な繰り返した二人の成果を公式の場で発表してみようと思いたち、機会を待ってうずうずしていたヨンちゃんとともに、「エスパスジャポン」で「韓国料理とワインを楽しむ会」を初めましたが、今回はその第二回目です。
 メニューは
・水キムチ
・どんぐりの豆腐、牛肉野菜キムチのせ
・夏の冷麺・鯛の韓国風煮つけ


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 普段から「エスパスジャポン」に出入りされている皆さんにも集まっていただき、光栄でした。ヨンちゃんの家庭料理の "あったか" さ、いえ、酒飲みが作る料理の大胆さと緻密な味構成、そしてフランスワインとの出会いの素晴らしさ! 集まっていいただいた皆さんには、ワインで Savoie サヴォア地方、Gascogne ガスコーニュ地方、Bordeaux ボルドー地方と、方々旅をしていただきました。盛り上がりましたね。この体験を基に、たまには韓国料理にマッコリ以外の飲み物を "気軽に" 選んでくださったらうれしいなあ、とその夜はお疲れビール。えっ、ワインじゃないの? 仕事のあとはやっぱりビールでしょう、勘弁してください。


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さあ、ゆくゆくはパリのアジア系レストランの前でデモ行進でもしましょうか。「ワインをなおざりにするな! 客を楽しませろ!」

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 次回のプランは "夜のお父さん要参加、韓国のスタミナ料理とワイン" もしくは "モツ食いのための内臓祭りにワイン屋台" といったところでしょうか。これからも、ヨンちゃんを含めた仲間との勉強会=飲み会で、いろいろ試してゆかなくては。 "ムッシュウ二日酔" はもはや私の古い友人なので、突然誘われても平気です。こうやって、私のフランス酒人生は続く……

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