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住まいの主人公は「人間」だけじゃない

2007年06月25日

この春に札幌市内のあるマンション改装工事の設計を行う機会がありました。最近はペットを飼えるマンションが増えてきましたが、建築主Sさんの要望は、まずSさん家族の一員であるかわいい小型犬(チワワ)Mちゃんにとって住みやすく優しい空間を実現すること。浴室、洗面脱衣室、トイレの全面改装、既存和室の洋室への変更など、ご家族の要望もさることながら、そうした改修と合わせて、ペットと共に生きる空間をどう考えたら良いかを大いに考えさせられた設計事例でした。


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このマンション、もともとはごく一般的なリフォームがすでに行われていた物件でしたが、人間にとって心地よく便利な空間が、仔犬にとってもそうかと言えば、必ずしもそうとは言えません。特に小型犬の場合は、たとえばちょっとした段差を飛び越えることや、ドアでしきられた(あるいは半開きになったドア)空間を移動することは、普通の人が考えているより大変で危険なことだと言うことでした。


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そこで、居室や水まわりの再リフォーム(既存洗面台、トイレ、風呂、和室の全面改装)にあわせて、小型犬Mちゃんのためのリフォームも行いました。新規作成および既存のドアにはMちゃんが自由に通れるようアーチ状の抜け道をつけることになりました。また、洗面脱衣室の段差やベランダへの開口にはMちゃん専用スロープ(ベランダのスロープは分解、仮設型)を設置しました。その他、多くのスペースで、人が過ごす空間とペットが過ごす空間のバランスを考えたデザインが求められました。


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建築主のSさんは、住居に関しても豊富な知識を持っていらっしゃる方でしたので、Mちゃんの生活空間をとても詳細にイメージされていました。もちろんご自身の生活空間についても同様です。空間デザインというのは、何よりもまずそこで生活する人の生活のあり方を出発点としています。これからは、私たち建築設計にかかわる人間は、人だけではなく動物(ペット)の生活のあり方も良く勉強しなければならなくなるでしょう。

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