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散歩の犬たちもびっくり!
〜たんちょう釧路空港に出現した北の動物たち〜

2007年09月03日

【アゴラ第1回目は、建築デザインなどの分野で一緒にお仕事をさせていただいている株式会社クリエート工房から届いた話題を紹介します】 *「アゴラ」は仲間達の活動を紹介するページです。


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1980年に釧路湿原がラムサール条約登録地に登録されてからもう三〇年近くが経とうとしているが、北海道の自然にたいする国際的評価は相変わらず高く 2005年には、知床半島が世界自然遺産となった。やはり北海道は日本でも有数の自然王国なのだ。


世界でも有数のこの自然遺産地域への玄関口となる「たんちょう釧路空港」にこの七月、知床の動物たちが「出現」した。旅客ターミナルビルの外構モニュメントとして創作されたこの像たちはみんな FRP(fiberglass reinforced plastic)でできている。繊維強化プラスチックといって、私たちの日常ではユニットバスの浴槽などに使われる素材で、ほかにも船舶、飛行機、ヘルメットなどさまざまなものに使われている。強度があり造作しやすい。


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空港の新名所となったモニュメントの前では、多くの観光客が知床の動物たちを背景に記念撮影をしている。アートディレクション・デザインを担当した株式会社クリエート工房(本社札幌)の西野社長に創作プロセスを聞いてみた。


まず動物の原画をいくつかの方向から紙にスケッチする。釧路は世界会議などで訪れる専門家や学者の多い場所である。かれらの目にも矛盾を感じさせない像にするために、スケッチの段階では羽根の枚数、骨格など、生物学的なディティールにも随分気を使ったとのことであった。この二次元の絵をもとに、まずは縮尺立体模型を製作。これをレーザー光で計測して三次元のコンピュータグラフィックを作成して型取りのデータを準備する。次ぎに、この三次元データをいくつかの身体部分に分解したたうえで、スチロール版を切削形成する装置に入力して雌型を切り出す。こうしてできた雌型にFRPを流し込んだあとにスチロール版の型を壊すと、原画を忠実に反映した立体ができ上がる。その後、細部を調整して、支えとなる心棒に各部分を張り付け、着色をほどこすということだった。


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ユニットバスのそっけなさに比べたらなんと素晴らしい豊饒感。もし山から本物の動物たちが出てきても、きっと空港の「門番たち」を自分の仲間だと思うに違いない。ヒグマたちの前を通りかかった散歩の犬が「うー」といってこの親子をにらんでいたという話も聞いた。そんなリアルな動物たちとともに行われた除幕式では、地元のアイヌの人たちを招いて「カムイノミ」と呼ばれる儀式(自然に対する感謝の儀式)が行われたということだ。私たち北海道に住むものはこんな動物たちと同じ大地に生きている。おなじ場所に生きる人間のほうはだいぶ素朴さを失ってきたけれど、時にはこの野生動物たちのような素朴な生活欲と家族愛に思いをはせながら、のびのびと生きてみたいものだ。(kudot)


【たんちょう釧路空港旅客ターミナルビル・外構モニュメント】
Art Direction:株式会社クリエート工房
Production:株式会社ウエザーコック
Client:釧路市/釧路空港ビル株式会社


株式会社クリエート工房へのリンク
http://www.create-display.ecnet.jp/

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