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〜選択した記事〜

Vol.021

駐車場所探しのイス取りゲーム 2007年04月26日

この街にきて誰でも驚くのが道路事情の悪さだ。まず、工事中が多く、どんな道路も片面、時には両面に車両がびっしりと駐車している。しかも一方通行だらけ。前に配達用トラックが止まっていたり、清掃車がいたりすると、あとには車の列が延々と続き、クラクションの嵐となる。

交通渋滞を解決すべく専用車線をバスおよびタクシーに解放し、普通車が入り込めないようそこを小高いプラットホームでわざわざ区切ったのは、ベルトラン・ドラノエ パリ市長のアイデアだ。バスやタクシーの流れを良くして公害の少ないクリーンな街を目指すため。が、おかげで普通車の渋滞はますますひどくなった。車の量は減ったと発表されているが、交通事情は改善されていない。

車でごった返している交差点、信号が赤になっても突っ込むドライバーの運転マナーは義理にもいいとは言いがたい。歩行者は横断歩道に横付けになっている車をよけながら渡ることになり、下手すると信号が変わっても車はそのまま動かず、90度の角度で車が木目込み状態になってしまうことがある。なので、夕刻ともなると、大きな四つ角にはおまわりさんが立ち、交通整理となる。彼らが真剣に仕事をすればするほどドライバーが殺気立ってくるようだ。笛を口にくわえ、機会仕掛けの人形のような仕草でうまく車をさばく交通整理のおまわりさんには、女性もけっこう多い。さぞ疲れるだろう、と思うけれど、「仕切り屋」さんや「相手を思い切り怒鳴り散らすのが好きな」人には快感なのかも知れない。

地下鉄やバスは安くて便利だが、いろいろな人がいて必ずしも清潔とは言えない。その点、車は自分だけの空間でやはり快適だ。免許がない私は、乗せてもらうのは楽でいいと思う反面、駐車場探しのストレスを思うと、車を持つのがいいかどうか本当に分からない。街の主な場所にはりっぱな地下パーキングがあるのに、どうしてそれを利用しないのか、不思議に思うことしばしば。もともとこの路面駐車システムしか知らない人たちは、道路の方が安いからか、あればラッキー、の不確定要素に身を任せる。そんなわけで、待ち合わせの時間に遅れる人がとても多い。駐車の場所が見つからず、ぐるぐる探しまわったあげく、ひどく遠くまで行くはめになったりするからだ。それでも、ある一定のクラスの人たちはたとえ不便でも車で動くのが常識のようだ。駐車場所探しは運次第だが、それにしても、どうしてこんなに路面が車だらけで空いてる場所がないのだろう? 

フランスの道路交通法では、個人の車に専用駐車場が義務づけられていない。駐車スペースがなくても車を持てるのだ。もちろん、近代建築アパートの地下にはかならず駐車場があり、それを月極で借りている人もいる。古いタイプのアパート住まいの人でも中庭に専用パーキングを持ったりしている。が、そうした快適さはまだまだ未知のもの(?)で、ふつうは市の交通局に行って証明書(カード)を作ってもらい、区の住民なら1日50サンチームで自宅近くの道路に駐車してもいいことになっている。そうなのだ。あのずらっと並ぶ車はその区域に住む人たちの優先スペースなのである。

ビジターの駐車料金は1時間2ユーロ、あとは15分ごとに50サンチーム、最高2時間までしか止められない。路上の駐車料金メーターでチケット(区画住民は24時間有効)を購入して運転席の前に置いておく。それが正しくなければ、すぐに罰金だ。戻った時、ワイパーに紙切れが挟んであったらアウト。たしか11ユーロだったと思う。土日はほとんどの道路が無料で月—金は区画住民は優遇されていると言っても、いったんその場を離れたら、次に場所があるかどうかは運次第だ。

人の車に乗せてもらってようやく目的地に着いたのにこの駐車場所探しにつきあわなければならない。やれやれである。あ、空いてる! …何だハンディキャップ用か。ここはリヴレゾン(配達)用だし…おっ、あの車、出るのかな? ウィンカーの点いている車の横で、目と仕草で「?」と問いかける。「出るんですか?」運良く空きそうな場合は、その車が出るまでその場で待機する。その間、後ろでじっと待っている車を気にするのは私だけで、フランスの人はそんなことはおかまいなしである。

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