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〜選択した記事〜

Vol.027

ベルシー橋 2007年12月17日

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ローマ時代の水道橋を思わせる2階建てのベルシー橋は、セーヌ川がパリに入って5番目の橋でその上を通るのはメトロ6号線だ。やはり12区と13区をつないでいる。現在は立派な石造りだが、1832年に建設されたときは吊り橋だった。7月革命のあとにできた鉄製の吊り橋は有料で、歩行者馬車とも通行料が課せられたという。ベルシー港湾地域はまだパリに組み入れられておらず、パリ市内に入る検問所前のこの地域ではアルコールが免税だった。そんなわけで水上運輸で各地からワインが荷揚げされ、近辺にワイン倉庫が建ち並びぶ世界一のワイン市場の名をほしいままにしていた。活気にあふれ、多くの芸術家が集まってヴィラージュ(村の意)を形成していた。

最初の吊り橋が強度不足とわかり、1865年に拡張工事で石造りの橋が完成し、通行料も無料となった。その後、1904年にメトロ6号線が通ることになり、1992年にはさらに両側に3車線拡張して、全長175m、幅40m(歩道、車道、高架線下自転車道、車道、歩道)と現在の姿となった。地下鉄下のアーチ部分のデザインは、パティシエ好きの人ならすぐにシャルロットケーキ、でなければミシュランのタイヤおじさん「ビヴァンディウム」を連想させるだろう。

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右側のベルシー河畔(12区)にすらりとした建物が、やはり橋のように車道をまたいで建っている。フランス財務省(新大蔵省)である。右側の屋上にはヘリポートが設置され、足下のセーヌ川には専用のボート「コンコルド」がいつでも発てるように待機している。スパイ映画のロケに使えそうだ。その手前のベルシー競技場ではスポーツ大会や大々的なコンサートが催される。映画の殿堂シネマテーク・フランセーズもその先に越してきた。

左岸(13区)にはご存知BNF国立ミッテラン図書館がそびえ、ベルシー橋とシモーヌ・ド・ボーヴォワール橋との間には水上プール、ジョセフィン・ベーカーがある。夏はどんなに気持ちいいだろう。パリ最新の地下鉄14番線が通っているが、無人運行のため、大々的なストのときでも止まらない快適かつ最新設備の路線だ。

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ところで、「パリの空の下」という有名なシャンソンがある。メロディを聞けば知らない人はいないだろうそのサビ部分に、次のような歌詞があった。

Sous le pont de Bercy,  
ベルシー橋の下
Un philosophe assis,  
物思う人が腰をかけ
Deux musiciens, quelques badauds  
音楽をかき鳴らす二人に幾人かが足を止め
Puis des gens par milliers  
その周りを群衆が行き来する

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「パリの空の下、歌が流れ・・・」とリフレインの続くこの歌の中に橋が出てくるのはたった一箇所、それがベルシー橋なのだから、驚いてしまう。もちろん、日本語のシャンソンの歌詞には訳されていないけれど。

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セーヌ川観光船のバトームーシュも通らない、とくに見るべきところもない、操車場と引き込み線の殺風景なもと港湾地域、いまだに工事続きで観光客の関心を引いた例がない場所だが、歴史的にはパリの門として物流の集中した華やかな一時代があったのだ。この界隈に住むパリの庶民の日常の楽しそうな様子がしのばれるではないか。一時はすっかり廃れていたかつてのワイン倉庫だが、今ではショッピングモール:ベルシーヴィラージュとなって生まれ変わり、パリ河畔は世界遺産として整備されつつある。いつかまた、この歌が人気を取り戻し、ベルシー橋のたもとで歌われるようになるのかも知れない。

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