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〜選択した記事〜

Vol.028

シャルル・ド・ゴール橋 2008年01月29日

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左岸のオステルリッツ駅と右岸のリヨン駅を直接結ぶ橋。交通量の多いオステルリッツ橋の渋滞を緩和するために建設された。完成が1996年、オステルリッツ駅方面からリヨン駅方面への一方通行だ。当初ジョンティ橋と呼ばれていたが、1998年に現在の名前になった。2006年に末っ子のシモーヌ・ド・ボーヴォワール橋(2007年07号_Vol.022を参照)が生まれるまで、パリで一番新しい橋だった。

しかし、なんだかへんだ。これまで見てきた橋とは違いすぎる。シモーヌ・ド・ボーヴォワール橋は見るからに女性的な魅力を備えていたし、ベルシー橋は立派に力強い男性美にあふれていた。それに比して、この中性的なオブジェはいったいなんだろう。両岸を結んでいなければ、「橋」であるかどうかもわからないくらいなのだ。なるほど、飛行機の羽をイメージしているとか。ずいぶん細長いそれが、まるめた両手の指、あるいは二つの花びらみたいに見える橋脚にちょこんと乗っかっているだけで、まるで重力の法則をからかっている。

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この橋、絵描きだったら描きたいとは思わないだろうナ・・・。そう考えたが、この橋を描いた絵がサイトに載っていた。ただし、工事中のであるが(No.5,6,7,8 http://www.auboiron.com/ponts-gb/)。このデザインは、当時開発中のリヨン駅およびベルシー地域の高層ビル街との調和を意識してのことらしい。なるほど、リヨン駅側にはRATPパリ高速交通網の本社をはじめ、ガラス張りの高層ビルが立ち並んでいる。歴史建造物の多いパリ中心部から来ると、タイムトンネルに入ったみたいな錯覚を起こす。

もう古い話になるけれど、いまから20年前、パリに降り立った外国人で、シャルル・ド・ゴール空港の近未来的構造(現在のターミナル1)に驚かなかった人はいないはずだ。一回りするともとの位置に戻るルーレット式円形建築は宇宙衛星みたいだったし、長い長い波打つチューブのような薄暗い廊下は、まるで異次元への通り道だった。すっかり近代化した今、建物のインパクトはさすがにもう失せたけれど、この橋の命名は、あの不思議な感じと因果関係があるように思えてならない。

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さて、セーヌにかけられた飛行機の大比翼の上を歩いて渡ってみよう。長さ207.75m、幅31.6mのこの橋は、歩道がやたら広く、ベンチとおぼしき木製の柵が車道とのしきりに使われているほか、のっぺりしている。橋を渡るという緊張感もわくわく感も与えてくれない。河岸に降りて橋を下から眺め、つるりとした楕円形の橋の裏側を見て初めて、そのオリジナリティにはっとするのだ。

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河岸に不思議なものがある。人に聞くと、この銀色の円形の塔はたぶん船舶用石油タンクではないかと言う。やはり実用的なものだったわけだが、この橋のたもとでは単なるオブジェとしても十分通ってしまう。寒いのにローラーホッケーの練習をしているのは女性たち。にこやかな笑顔が気持ちいい。浮浪者たちが橋の下に寝泊まりしている。石には苔が生えている。テクノロジーの粋と遊びが有機体の密かな息づきと難なく同居している。

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眺めた対岸(13区)に、これまた不思議なガラスの建物が現れた。巨大な緑色の龍のような動物が浮き彫りになっているのだ。さては、これは13区のチャイナタウンの超大物、「陳氏百貨商場」がここまで進出してきたのか、と思ったが、工事主はEiffel。あのエッフェル塔を造ったエッフェルの子孫の会社が建設を進めているのはショッピングモールで、水の上にせり出した緑色の蛇みたいなところは階段通路になるという。光に満ちた水辺の通路。2008年9月オープン時にはぜひここに来て、宙に浮いたような透明のパサージュを通ってみよう。

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